素振り1万本

元全国区剣士が語る、剣道で強くなるためのブログ

面を速く打つ【全国クラスしか知らない打ち方】

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面を速く打つためにはどうすれば良いか。スピード、それはとても要因だ。

 

今回は、面を速く打つ方法を紹介しよう。ここでの面は、飛び込み面とする。

 

はじめに、面が速い有名な選手といえば誰だろうか?

殿堂入りだと、宮崎正裕選手、高鍋進選手、近本巧選手。

最近では、勝見選手、西村選手、竹ノ内選手、村瀬選手、林田選手等だろう。


ひとえに面が速いと言っても、以上の選手はそれぞれ違う打ち方を持ち、また、速さの種類が違う。

 

 

 

面の速さの公式

 

左足のバネ × 起こりの小ささ × 竹刀の振りの小ささ

 

この3つが組み合わさり、速い面打ちが可能になる。左から順に重要な要素である。

 

左足のバネ

特にこの中でも重要なのが、左足のバネ。これは、才能的なものがあるのかもしれない。

歴代最高の優勝数を誇る宮崎正裕選手、最速の面を打つと言われる高鍋進選手は、屈指のバネを持つと言われている。

 

特に、高鍋選手のバネは剣道界最高だろう。

現在神奈川県警の監督である宮崎正裕選手は、教え子である高鍋選手について、こう語っている。

「速いと思う選手は今までたくさんいたが、その中でも高鍋は群を抜いている。持って生まれた才能だ」

 

面を打つとき、初心者の多くが大事なのは腕力だと思いがちだが、実は蹴り出す脚力の方が重要だ。むしろ、速い面を打つという点において、腕力が占める重要比率は低い。

この高鍋進選手の動画を見て欲しい。

 

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彼の構えは後傾的だ。後ろに体重が乗っている。

それは、常に左足にタメを作っているからだ。

 

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比較してみよう。

左が内村選手、右が高鍋選手だ。

この微妙な違いがわかるだろうか?

 

前傾的な内村選手の構えに対し、高鍋選手の構えは後傾的だ。

 

内村選手は、出ばなや返し技を得意とする。そのため、右足に体重をのせていた方が細かな動きに対処でき、返し技が打ちやすいという特徴がある。

デメリットとしては、遠くへ打てないという点があるが、そもそも背が低い内村選手が無理して遠間から打つのは得策ではなく、小柄な体を生かした小手や返し技の方が有効なため、理にかなった構えだと言っていいだろう。

 

高鍋選手は、上記の通り面を得意とし、"相手の守りよりも先に打つ"というスタンス。

遠く・速く打つためには、左足を強く蹴りださなければいけない。後傾的なのは、左足に体重をのせて、タメを作っているからである。

いわば砲台に弾を込め、彼は常に発射準備完了の状態にしていると言える。

デメリットとしては、大技を狙った構えであるため、細かな動きができないということ。高鍋選手が返し胴や出小手を使うことは非常に稀だ。なぜなら、構えそのものが"それ用"ではないからだ。

 

起こりの小ささ

そもそも、"起こり"とは何だろうか。

それは、技の打ち始めのことである。

技の打ち始めを見えなくし、相手に気付かれないように打つことだ。

 

相手に起こりを見させないなど、そんなことが可能なのか?

 

結論から言うと、不可能だ。

しかし、それを極限まで見えにくくさせる必要がある。

 

その方法としては、

右手と右足を同時に出して面を打つことだ。

 

この起こりが見えない面の使い手として、村瀬選手が上がる。

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この動画の、5:03を見て欲しい。

スローで見てみると、彼の打ち始めに、右手と右足が同時に動き出しているのがわかる。

 

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なぜ"右手"と"右足"なのか?

 

それは、相手から見て一番見える二点が、右手と右足だからで、相手はそれを元に"起こり"を判断するからである。

 

多くの選手は、手から動きがちだ。そこに足を連動させなければいけない。

 

このスキルは簡単に思いがちだが、意外と難しい。

速く打とうとすれば、どうしても手から出がちだからだ。

故に、脱力して打突する必要がある。

 

 

竹刀の振りの小ささ

 

竹刀の振りを小さくし、最短距離で打突することが非常に重要だ。

 

参考にする動画は、近本巧選手だ。 

彼が5:00で決める面を見て欲しい。

 

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竹刀の振り幅が極端に小さい。

これは手首を使うだけでなく、全身のバネを利用して打てているからこそできる芸当である。

打突の際、上半身を立てることにより打突の起こりの最小限化と打突の強度の強化両方の効果がある。そして上半身を立てて打つには、足を使って前に体を運べるようにならなければいけない。


これについては、また別の記事に書こうと思う。

ひとえに速い面と言っても、なぜ速いかは実は大きく違う。ここを見分けれるか見分けれないかが、今後変化していく剣風についていき、勝てるかどうかが変わってくるのである。